2017.07.17

「日本人はウラに弱い」と言われることがありますが、それは一体なにが原因なのでしょうか?

生活習慣や言葉の違いと言われれば、その通りではあるのですが、では具体的にどういった違いがあるのか、今回は日本人が裏拍やアップビートになぜ弱いのかについてお話していきたいと思います。

そもそも「ウラ」とか「裏拍」ってなんなのか分からないという人は過去の記事に目を通してから、こちらを読んで頂ければと思います。




日本人のリズムの捉え方の傾向

「救急車のサイレンの音はどんな音ですか?」という質問をすると、日本人なら100人中100人が「ピーポーピーポー」と答えるでしょう。しかし、西洋人に同じ質問をすると「ポーピーポーピー」と答える人がほとんどだそうです。

それは日本の伝統音楽で、一定の拍子感を持つものの多くが「強迫」と「弱拍」のくり返しからなる2拍子的リズムで構成されているからだと言えます。

これに慣れてしまっている日本人は、強い音を最初に聞き取る傾向がいつの間にか身についてしまっています。そのため救急車のサイレンの音が「ピーポーピーポー」と聞こえるのです。

日本人と西洋人の救急車のサイレンの音の捉え方の違いを譜例で表してみるとこうなります。

reason-why-japanese-are-weak-to-upbeat-1

日本人の場合の①は4分の4拍子におけるダウンビート(強拍)にアクセントがついたものです。一方②はアップビート(弱拍)にアクセントがついた、いわゆる「アフター・ビート(バック・ビート)」です。

日本人はどうしてもは1拍目に強い拍を持ってきたがる傾向があります。このことから日本人のリズムの捉え方は典型的な「ダウンビート」であると言えます。

古くからの習慣の影響で、我々日本人は誰に習ったわけでもない救急車のサイレンの音を「ピーポーピーポー」と自然と聞き取ってしまっているのです。

日本語という言葉のリズムからの影響

西洋人とのリズムの捉え方の違いとして普段、我々が何気なく発している日本語も日本人のリズム感に大きな影響を与えているひとつです。

例として今回「アップビート」という日本語と「Upbeat」という英語を比較してみます。

reason-why-japanese-are-weak-to-upbeat-2

日本語のリズムは1拍目から3連符の中抜きのリズムで刻まれているように感じられますが、英語のリズムでは前の小節から次の小節の1拍目にかけてリズムが刻まれているように感じられます。

日本語の発音は、小節の最初の1拍目から始まる「強起」であることがほとんどに対して、英語の発音はこのように「弱起(アウフタクト)」で始まることが珍しくありません。

「弱起」とは、学生時代の音楽の授業で習ったという人も多いかと思いますが、メロディー、もしくは楽曲が最初の1拍目以外、または弱拍から始めることを意味し、ドイツ語では「アウフタクト」、英語では「アップビート」です。

つまり、英語圏に住んでいる人たちは意識せずとも、普段からアップビートを感じながら生活しているのです。

普段からアップビートを感じながら生活している人たちより、こういった言葉の違いで、裏拍やアップビートとはあまり縁のない生活を送っている日本人が、そられに弱いと言われるのは当然と言えば当然の話でしょう。

アップビートにアクセントをつけたリズムを主体とするロックやジャズに日本語が合わないと言われるのも、言葉の発音の違いによるものからです。

起点の違い

我々日本人はなにかが発したところを起点として考える傾向があります。もちろんそれは音楽においても同じで、音が発したところをリズムの起点として捉える人が多いと言えます。

例えば、ドラマーがスティックを持ってスネア・ドラムを叩いて音を出すという動作の中で、日本人はスティックを振り下ろして音が出る「振り下ろし」の動きを起点として捉える傾向があります。しかし、西洋人の場合は「振り下ろし」の前の「振り上げ」を動きの起点として考えます。

つまり、スティックを振り下ろして音が出る「振り下ろし」の前の「振り上げ」は裏拍にあたります。西洋人の動きは裏拍から入っているということになります。

その他、腕立て伏せを数える際、日本人はひじを曲げて地面に一番近づいた時点で数をカウントするのに対して、西洋人はひじを曲げた状態から腕を伸ばして体を持ち上げた時点でカウントします。

日本人は一番力を加えたところを起点としますが、西洋人は力を加えていない、リラックスした状態のところを起点としているのです。我々がひじを曲げてカウントしているところは、西洋人からすれば裏拍にあたります。

このような物事の捉え方の違いからも、日本人が裏拍やアップビートに弱いと言われる理由に繋がっていると言えるでしょう。

おわりに

日本人と英語圏内に住む西洋人とでは、そもそものリズムの捉え方に違いがあることをご理解頂けたかと思います。

古くからの生活習慣や言語の違いで、スタートの地点からかなり差がついてしまってはいますが、我々も普段の生活の中でアップビートを意識することで、少しずつ身についてくるでしょう。

アップビートで始まる曲をたくさん聴いたり、楽器を弾く際も裏拍やアップビートを意識した練習を取り入れてみたりして下さい。