2017.07.01

ベースやギターなどの楽器を弾く人にとっては非常になじみ深いタブ譜。今では楽器屋や本屋のほか、ネット上にもさまざまな楽曲のタブ譜は存在しています。

たまにYouTubeなどの演奏動画のコメント欄に「タブ譜ください!」的なことを書いている人がいて、それに対して動画投稿者が「タブ譜にばかり頼っちゃイカン!」的なことを言っているのを目にすることがあります。

今回は「なんでダメなの?」と疑問に思う人のために、個人的なタブ譜に対する見解をお話していきたいと思います。




そもそもタブ譜とは?

タブ譜とは簡潔に説明すると、それぞれの楽器の奏法を文字や数字で表したもので、正式な名称は「タブラチュア譜」です。わりと最近ものと思われがちですが、意外にもタブ譜が使用され始めたのは14世紀頃からとのこと。

現代では主にベースやギターの一般的な楽譜となっており、市販されているポピュラー音楽のバンドスコアなどは五線譜とタブ譜の両方で記されたものが多いかと思います。

ベースやギターの弦の本数に合わせた横線で表記され、上から順に1弦、2弦、3弦…を表しています。各線上に記されている数字は押さえるフレットの位置を表しています。

「H」や「P」、「S」などのアルファベットが記されていることがありますが、「H」はハンマリング・オン、「P」はプリング・オフ、「S」はスライドで、各奏法の英語表記での頭文字も記されていたりします。

タブ譜のメリット

タブ譜の良いところは、楽典などの音楽的知識がなくても、誰でも比較的安易に読めることでしょう。 五線譜を読むのが苦手な人でもパッと見ただけで、押さえるポジションなどが分かるように記されているので非常に便利です。

ベースやギターには異弦同音と言って、異なる弦でも同じ高さの音が出せます。例えばベースの2弦2フレットの「E」と3弦7フレットの「E」は異弦同音です。

もちろん倍音などの関係で異弦同音であっても響きが違ったり、また前後の音の関係で押さえるポジションによってフレーズの弾きやすさなんかも変わってきたりしますが、初心者がいろいろと余計なことを考えずに楽器を弾くことに集中しやすくなるといった点でタブ譜は非常に役立つと言えるでしょう。

なんでも新しいことを始める際に、最初のハードルが高すぎてつまずいてしまうと長続きしないということが多いかと思います。タブ譜を利用することによって多少なりともそういったケースは回避しやすくなるのではないでしょうか。

また、その他のメリットとして作曲者などが演者に押さえて欲しいポジションを指定する際にタブ譜を使用するとスムーズに伝わるので便利かと思います。

タブ譜のデメリット

デメリットと言いますか、タブ譜に頼りきっていると一向にうまくならないと言われる由縁ですが、メリットでも上げた、誰でも比較的安易に読めることでしょう。要するに、楽典などの譜面の読み方や音楽理論を学ぼうとしなくなるといったことがひとつ上げられるかと思います。

タブ譜に記されているポジションだけを覚えてしまうと、実際に弾いているその音がなんの音なのか曖昧になってしまいがちです。どこを押さえたらどの音がなるのかはやはり覚えていくべきかと思います。

また、調号もタブ譜には記されていないので、パッと見ただけではその曲のキーがなんなのかも分かりません。市販されているバンドスコアなどにはタブ譜と並んで五線譜でも記されているものが多いので、五線譜を見れば分かることなのですが、最初にタブ譜の便利さを知ってしまうと、何かきっかけがない限りは五線譜に目を向けることは少ないかと思います。

もちろんその曲のキーが分からなくてもタブ譜に記されている通りに弾ければ別に問題ないと言えば問題ないのですが、キーを知ることでその曲がどういった音で構成されているのかがある程度分かるので、なんとなくフレーズも予測しやすくなったり、覚えやすくもなります。

そしてもうひとつは、細かいニュアンスが分からないという点です。タブ譜だけではフレーズの細かいニュアンスなどを表記するには限界があります。

タブ譜通りに弾いていても「なんだか雰囲気が違うなぁ…。」と感じることが出てきたりするかと思いますが、こればっかりは何度もくり返し曲を聴き込んで試行錯誤するしかありません。

また、市販されているバンドスコアは弾いている本人が譜面に起こしたものはほとんどないかと思います。別の第三者が曲を聴いて採譜していることがほとんどなので、必ずしもタブ譜に記されているものが正しいとは限らないということです。また採譜する人によってフレーズのニュアンスの捉え方なども違ってきます。

あるベーシストは「歪ませてハイ・ポジションでコード弾きしていたら、ギターで採譜されていた!」なんてことがあったそうです。

タブ譜にたよりきっていると、間違ったまま覚えてしまうという危険性があるということも頭に入れておきましょう。

あと、将来プロのミュージシャンになりたい、特にスタジオ・ミュージシャンやセッション系の仕事をしたいと思っている人はタブ譜ではなく五線譜を見ましょう。そういったプロの現場ではタブ譜が使用されることはまずないので少しでも早い段階から慣れておいて損はないかと思います。

おわりに

個人的に楽器を始めたばかりの初心者の人がタブ譜を利用するのは大いに賛成です。むしろそんな便利なものを使わない手はないと思っています。

初心者がと言いましたが、ベースを始めてもう10年以上たっている僕は今でもタブ譜を大いに利用しています。理由としては曲を覚える時間の短縮です。

もちろんタブ譜だけを見て、なんてことはせずにしっかりと曲も聴き込んで、弾いていてなんか違うなぁと感じるところは自分で音を拾ったりもしています。やはり1から曲を聴き込んで耳コピして覚えるのとではかなり時間的に違ってきます。耳コピが得意な人にとってはタブ譜をその都度見ることの方が面倒かもしれませんが…。

タブ譜だけに頼りきってしまうと、確かにフレーズを間違ったまま覚えてしまったり、上達するのに時間がかかってしまったりすることもあるとは思いますが、タブ譜はタブ譜で必ずしも正解ではないということを念頭に置きつつ、便利なものはどんどん活用していけば良いのではないでしょうか。