ベースやギターなどの楽器にはボルト・オン、セット・ネック、スルー・ネックといった3つのジョイント方法があります。今回はその中からスルー・ネックについてお話していきたいと思います。
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スルー・ネックとは
スルー・ネックのベースやギターにはネックとボディを接合するジョイント部がありません。ネック材にヘッドからボディ・エンドまで木材として一体化されたものが用いられ、それをウイング材と呼ばれるボディ材で両側から挟むように接着されています。
ボルト・オンやセット・ネックなどのジョイント方法に比べひとつのパーツとしては非常に長くなってしまうため、ネック部が反りを起こしやすい傾向にあります。それを防ぐため、ゆがみや反りが出にくい3~7ピースほどの複数の木材を貼り合わせてつくられたプライウッド(合板)が一般的によく用いられます。
プライウッドは強度に優れているほか、何層かになっているその独特の美しい外観も特徴のひとつです。その美しい外観を活かすため、塗装は木目が見えるよう透明なもので行うことが多いようです。
また、スルー・ネックは別名「通しネック」と呼ばれることもあります。
出典: Aria Guitars
サスティーンについて
音の伸びが良い、豊かなサスティーンが得られるといった点がスルー・ネックのメリットとして一番よくあげられるのではないでしょうか。構造上、弦の支点となるナットとブリッジが同じ木材上にあるため、理屈の上ではネックとボディの間における弦振動の伝達がほかのジョイント方法のものより優れていると言われています。
ただ、実際のところ、ボルト・オンやセット・ネックのものがサスティーンに関してスルー・ネックのものより明らかに劣っていると感じることは少ないとも言われています。
サスティーンに関してはジョイント方法による違いよりも、ボディやネックに使用されている木材の種類、厚さや太さなどの方が大きく関係していると言われています。
スルー・ネックだからといって、必ずしもボルト・オンのものよりサスティーンが良いとは限らないということを頭の片隅に置いておいてください。
演奏性
スルー・ネックのメリット、特徴としてハイ・ポジションでの演奏性に優れているといった点もよくあげられます。ヒール部(ネックとボディのつなぎめ付近)の加工の自由度が高いため、ハイ・ポジションであってもスムーズなフィンガリングが行いやすくなっています。
セット・ネックやボルト・オンの場合、ネックとボディを接合するための接着面やボルトで固定するためのスペースや強度を確保する必要があるので、まったくヒール・カット加工を行えないわけではありませんが限界があります。
ほかのジョイント方法に比べスルー・ネックは演奏性に優れていると言えるでしょう。
音質
先ほども述べましたが、スルー・ネックは構造上、どうしても強度的な不安があるので、比較的硬めなメイプルなどの木材がよく使われます。そうすると、どうしても高音域寄りの硬めな音質になってしまう傾向があります。
少しでも硬質な音質を緩和するのと、ネック部の強度を増すためにメイプルよりもやわらかい木材とのプライウッドが使われますが、あまり効果的ではないと言われています。しかし、音質を重視してやわらかめな木材を多用すると強度の低下に繋がってしまうため、基本的には行っていないようです。
硬めの音質が好みで求めているのであれば問題ないかもしれませんが、そういった特性があるということは覚えておいた方が良いでしょう。もちろん音質を決めるのはネック材だけではないので、スルー・ネックだからといって必ずしも音が硬めとは限りません。
そのほかの特徴
かつては、スルー・ネックはつくるのに高い技術が必要な上にコストと手間がかかってしまうため、どうしても値段が高くなってしまいがちでしたが、最近では中国製の比較的安価なものも出まわるようになってきています。
ネック材が1ピースのものであれば、長さや厚さ、幅のある木材が必要とされるため、入手も難しく、値段も高くなってしまいますが、最近のものはほとんど複数の木材を貼り合わせたプライウッドが使用されているので、長ささえあれば比較的入手も安易ですし、1ピースの木材に比べプライウッドは加工性も高いため、以前よりコストを抑えてつくることが可能となっているようです。
あと、よく言われがちなのは、メンテナンス性が高くないという点です。一体となっているため、ネックをボディから取り外すことはできませんが、よっぽどのことがない限り、日頃のメンテナンスでネックを取り外すことはないかと思います。素人レベルで行えるメンテナンスに関してはほかのジョイント方法のものと差はないと言えるのではないでしょうか。
強いて言うなら、当たり前のことですが、ネックが折れてしまった場合、ネックを交換できないので、接着して補強するといった選択肢しかないといった点ぐらいかと思います。
おわりに
ほかのジョイント方法のものに比べ、数も少なく、それなりにデメリットもありますが、スルー・ネックならではの演奏性や見た目の美しさもあって根強いファンは多いです。
今回はスルー・ネックに関するお話でしたが、ほかのジョイント方法に関する記事も近々投稿したいと思います。
参考程度にスルー・ネックにはこういった特徴や傾向があるというのを覚えておいていただいて、楽器を購入される際などに少しでも役に立てば幸いです。
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Ibanezの、昔韓国で作っていた時代のスルーネックRGシリーズを所有してるのですが、クリケット奏法ができません。スプリングや弦のゲージを変えたり、弄ってはみたのですがどうしても他のFRTタイプトレモロで出来るような細かい振動が出せません。もしかしたらスルーネックのせいではないかと考えているのですが、ググってもそういった情報が見つからず諦め半分になっています。何か知見はお持ちでしょうか。