2016-12-09

ジャコと言えばフレットレス、彼をご存知の方ならまず連想されるかと思います。現在のフレットレスベース奏者の中から彼の麗郷を受けていない人を探す方が困難なのではないでしょうか??

それぐらい影響力のあるジャコのトレードマークとなっているのが、自ら手によって改造され「Bass of Doom」と名付けられた1962年製のフェンダーのジャズベースです。

今回はジャコの愛器「Bass of Doom」の詳細や手にした経緯、それ以前に使用していたベース等について調べてみたので、お話させて頂きたいと思います。




初めて購入したベース

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出典: The Life of Jaco | Jaco Pastorius

13歳の時にドラムからベースに転向したジャコですが、最初に手にしたエレクトリックベースは1967年製のフェンダーのジャズベースだと言われています。15歳の時に新聞配達のアルバイトをして貯めたお金で買ったんだとか。

カラーはサンバーストでバインディングネックにブロックポジションのものだったとのこと。ジャコが初めてバンドリーダーを務めた「Woodchuck」の音源ではこのジャズベースが使用されているそうです。

ただ、このベースはジャコがお気に召す音がしなかったようで、気に入らなかったとのこと。音源を聴く限り、個人的には十分いい音してると思うんですが…。

ブラックベース

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出典: Bass No.0 解説 | 中村梅雀公式サイト

そして次に手にしたのは親友のボブ・ボビングが使用していた1960年製の黒いジャズベース。ジャコはボブ・ボビングは所有していたこの黒のジャズベースの音が好きで欲しがっていたらしく、自分のアップライトベースとの交換で手にしたとのこと。

手にしてすぐジャコはこのベースを改造したとのこと。まず弦をフラットワウンドのものからロトサウンドのラウンドワウンドのものに張り替え弦高を低くしたそうなんですが、フレットがすり減った状態であったため、ノイズがひどかったとのこと。

そこでフレットを交換しようとフレットを抜いたそうなんですが、その際フレットを抜いた状態で弾いてみたところ、それを気に入ってしまい、そのままフレットレスとして使うようになったとのこと。抜いたフレットの溝はパテ埋めを施していたとのこと。

また、ローズウッド指板にラウンドワウンド弦では指板がすり減ってしまうので、それを保護するために船舶の船底等に使用されるマリーン・エポキシと呼ばれるエポキシ樹脂製のクリア塗料を塗っていたとのこと。当初は本人が行っていたそうですが、エポキシは剥がれやすかったため、後にジャコの楽器のメンテを晩年まで手掛けていたギター職人であるジョン・カラザースの手によりに剥離が発生しにくいよう改良されたそうです。

コントロール部は2連2軸のスタックノブで2ヴォリューム、2トーンの仕様であったものをコントロールしやすい3連の2ヴォリューム、1トーンに改造されています。ちなみにスタックノブは1962年前半までのジャズベースにしか採用されておりません。またコントロールノブのパーツは本来ジャズベースに使用されている黒いプラスチック製のものではなく、プレベ等に使用されている金属製のものを装着されています。

後にこのブラックベースはジャコの最初の妻であるてトレイシーの出産費用を捻出するために売却されたとのこと。ただ、ジャコはブラックベースの音が必要だったのか、一度だけWeather Reportのリハーサルで使用するために売った相手から借りたことがあるそうです。

そしてまた巡りめぐって親友のボブ・ボビングの元に戻りますが、現在このベースは日本の俳優であり、ベーシストの中村梅雀氏が所有されています。

Bass of Doom

音は気に入ったものの黒いベースは見た目的に好みではなかったのか、サンバーストカラーのベースが欲しかったジャコは後に「Bass of Doom」と名付けられ、彼のトレードマークともなる1962年製のジャズベースを偶然にも質屋で見つけ、90ドルで購入されたそうです。200ドルだという説もあるそうですが、まさか伝説の「Bass of Doom」が質屋で買ったものとは正直びっくりです!笑

ピックガードは外され、ネックとコントロール部を気に入っていた1960年製の黒いジャズベースのものと交換されています。

その後、生前長きに渡って愛用し続けるのですが、何かのケンカの際に怒ったジャコ本人が粉々に粉砕してしまいます。いろいろ調べてはみたのですが、80年代であること以外はどういった経緯でいつどこで誰とケンカをした際に粉砕したのかは分かりませんでした。

大きく損傷してしまった「Bass of Doom」ですが、リペアマンであるケヴィン・カウフマンとジム・ハミルトンによって丁寧に修復さたとのこと。また、ボディには修復の痕を隠すため、フィギュアド・メイプルの化粧版が貼られ、きれいに仕上げられておられらます。

そんな「Bass of Doom」ですが、ジャコが他界する数ヶ月前に盗難に遭い、長期間行方不明になってしまいます。その後ニューヨークのあるコレクターが所有していることが判明し、遺族が返却を求めるも当時の所有者が拒否したため、法廷争いになりかけていたところ、メタリカのベーシストであるロバート・トゥルージロが取り戻す資金を支援したそうです。遺族は深く感謝すると共にトゥルージロに「Bass Of Doom」を託したとのこと。

また、ジャコの息子であるフェリックス・パストリアスがトゥルージロから「Bass Of Doom」を借り、イエロージャケッツの「A Rise in the Road」のレコーディングで使用されています。

美しいベースラインをフィーチャーしたスローバラード曲「(You Know9) When it’s Time」で聴くことができます。

おわりに

余談ではありますが、こられ以外にもジャコは生前100本以上のベースを手にしてきたと言われています。

また、ジャコはライブ以外では指板の摩耗を防ぐため、あまりフレットレスは弾かず、普段の練習の際はフレッテッドのベースを使用していたそうです。

今回はジャコの愛器についてのみでしたが、次回はその他の使用機材やプレイスタイル等についても触れていきたいと思います。