2017.07.21

僕の過去の記事を読んで下さっている人なら、アップビートはどういったものなのか、ある程度ご理解しておられるかと思います。

では今回は実際にどうやってリズムをアップビートで捉えるかについてお話していきたいと思います。

過去の記事をまだご覧になられていない人は、過去の記事も合わせて読んで頂ければ、より理解が深まるかと思います。




アップビートで捉える練習

よくベースとバス・ドラムのユニゾンとして用いられる譜例を用意しました。

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この場合、下の譜例で表したように1拍目の付点4分音符から2拍目の裏拍の8分音符までをリズムのひとつのまとまりとして捉える人が多いのではないでしょうか。このような捉え方をした場合、ズッシリと重たいリズムになりがちかと思います。

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このリズムをアップビートで捉えるとどうなるかを表したのが次の譜例です。

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先ほどとは逆に裏拍の8分音符から次の拍の付点4分音符までをひとつのまとまりとして捉えることにより、リズムに躍動感や押し出されるようなプッシュ感が出てくるかと思います。簡単にいうとこれがアップビートで捉えるということです。

いろんなリズムもアップビートで捉えてみよう!

よく用いられるであろう、リズム・パターンをいくつか例にあげて説明していきたいと思います。メトロームに合わせて、実際に楽器を弾いたり、手拍子などをしたりしてリズムの違いを感じてみて下さい。

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上の譜例のリズムの場合、普通なら「タンタカ、タンタカ、タンタカ、タンタカ」と捉えるかと思いますが、アップビートで捉えるなら裏拍の2つの16分音符から次の拍の8分音符までをひとつのリズムのまとまりとして感じてみて下さい。

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グイグイと引っ張っていくような、より疾走感のあるリズムになったのではないでしょうか。

次はいわゆるシャッフルと呼ばれる、中抜き3連のリズムです。

「タッタ、タッタ、タッタ、タッタ」とリズムを捉えるのではなく、下の譜例で表したように3連符の裏拍から次の拍の頭の1拍目の表までをひとつのまとまりとして捉えてみて下さい。

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次はサンバなどでよく用いられるリズム・パターンです。こちらも同様に拍の裏から次の拍の頭までをひとつのまとまりとして捉えてみて下さい。

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「ターンタ、ターンタ、ターンタ、ターンタ」より「タターン、タターン、タターン、タターン」というリズムで捉えた方が押し出されるようなプッシュ感のあるリズムになり、サンバの雰囲気により合ったものになるのではないでしょうか。

アウフタクトもアップビート

過去の記事でもお話させて頂きましたが、学生時代の音楽の授業で習ったドイツ語の「アウフタクト」は英語の「アップビート」を意味する言葉で、日本語では「弱起」という言葉が当てはめられています。

この「弱起」というのはメロディー、もしくは楽曲が最初の1拍目以外、または弱拍から始めることを意味します。最初の1拍目から始まるものは「強起」です。下の「弱起」の譜例を見て頂ければ分かりやすいかと思います。

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こういった始まり方のする楽曲のことを「アウフタクト(弱起)」と学生時代には我々は習いました。つまり「アップビート」とは小節の1拍目以外のことであると以前の記事でお伝えしましたが、アウフタクトも「アップビート」ということになります。

先ほどのアウフタクトの譜例のリズムの捉え方を分かりやすく表すと下の譜例のようになります。

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見て頂ければ分かるように、アップビートの連続となっています。

ちなみに、弱起の楽曲の場合、最後の小節を弱起の拍だけ短く記す場合があります。このような弱起の最初と最後の小節のことを「不完全小節」と呼びます。「不完全小節」とは拍子の持つ泊数を満たしていない小節のことを指します。逆に拍子の持つ泊数を満たしているものは「完全小節」と呼ばれます。

この「不完全小節」は通常、小節数には加えられません。ただし、他の楽器との兼ね合いで、休符で埋められて「完全小節」となっている場合は小節数として加えます。

アップビートは息を吸い込むように

アップビートとは裏拍であることも、以前の記事でお伝えしましたが、呼吸で例えるなら「吸い込む」という動作がアップビートにあたります。逆にダウンビートは呼吸の「吐き出す」という動作にあたります。

呼吸が「吸い込む」と「吐き出す」の一連の動作であるように、アップビートとダウンビートも同様に一連の動作ということになります。

別の言い方をするならばアップビートは「緊張」や「テンション」、ダウンビートは「解放」や「リラックス」と解釈しても良いでしょう。

リズムをアップビートで捉えた際、アップビートの部分は息を吸い込むような感じで演奏すると、より一層ニュアンスが出るかと思います。

おわりに

単純なリズムであってもリズムの捉え方ひとつでニュアンスや雰囲気はかなり違ってきます。こういった点もリズムのおもしろさのひとつでしょう。

しっかりと習得することで演奏や表現の幅が広がるかと思います。この機会に練習などに取り入れてみてはいかがでしょうか。