2017.07.09

ベーシスト以外でも、楽器を演奏する人なら「どうもリズムが安定しない…。」といった悩みをお持ちの人は少なくないかと思います。

リズム感を養うためには、やはりメトロノームを使っての練習が効果的でしょう。ただ、メトロノームに合わせて練習している時はそれなりに弾けているのに、メトロノームなしだと急に不安定な演奏になってしまうという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

それは「パルス」というリズムの土台が欠けてしまっているからです。

今回はリズムの土台となる「パルス」についてお話していきたいと思います。




パルスとはなにか?

「パルス」は鼓動や脈拍のことを指す言葉ですが、音楽におけるリズムも同じような意味合いで、「一定の間隔で規則的に発するもの」が「パルス」です。

以前の記事で「リズムとはある時間の中で強弱を持つ音のまとまり(パターン)が周期的にくり返されるもの。その要素の中には音の強弱の他に高さや入り方、切り方、運び方、タイミング、躍動感なども含まれます。」と表現しましたが、「パルス」との違いは強弱などのアクセントがあるかないかです。

「パルス」とは強弱や躍動感を持たない、無機質で機械的な、常に均等な単位で刻んでいくものです。身近なものですと、アナログ時計の針の音も「パルス」と言えます。

細かいほど、正確さは増す

演奏中にしっかりと「パルス」を刻んでいるかいないかで、リズムの正確さに差が出てきます。また、どの単位(音符)で「パルス」を刻むかによってニュアンスなども変わってきます。

次の譜例の①と②でも違いはかなり出てきます。

rhythm-becomes-accurate-by-mastering-the-pulse-1

①のように4分音符で「1、2、3、4…」とカウントするより、②の8分音符で「1ト、2ト、3ト、4ト…」とカウントをする方が細かく「パルス」を刻んでいるので、より正確なリズムとなります。また、これを8分音符ではなく、16分音符で刻むと、さらに正確なリズムを生み出すことも可能です。

ちなみに、英語での8分音符のカウントは「1 and、2 and、3 and、4 and(ワン・エン、ツー・エン、スリー・イー・エン、フォー・エン)」です。

その他、16分音符のカウントは「1・チ・ト・オ、2・イ・ト・オ、3・ン・ト・オ、4・イ・ト・オ」、英語では「1 e an da、2 e an da 、3 e an da 、4 e an da(ワン・イー・エン・ダー、ツー・イー・エン・ダー、スリー・イー・エン・ダー、フォー・イー・エン・ダー )」、8分3連は「1・チ・ト、2・イ・ト、3・ン・ト、4・イ・ト」、英語では「1 an da、2 an da、3 an da、4 an da(ワン・エン・ダー、ツー・エン・ダー、スリー・エン・ダー 、フォー・エン・ダー)」となります。

パルスの選択

どの単位(音符)で「パルス」を刻むかは、楽曲の雰囲気やテンポ、演奏者の好みにもよるので、特に決まりはありません。

1曲通して同じ単位(音符)で刻む場合もありますが、イントロ、Aメロ、Bメロなどセクションごとに違う「パルス」を刻むことで、より楽曲の表情の豊かさが増すこともあります。

次の譜例のように2分音符を主体とした場合、少し極端な例ではありますが、「パルス」を16分音符で刻むか、8分3連で刻むかによってかなりニュアンスが変わってきます。

rhythm-becomes-accurate-by-mastering-the-pulse-2

③は16分音符で刻んでいるため、細かくタイトなニュアンスのリズムになるかと思います。別の表現をするとすれば、少しカクカクした硬いニュアンスのリズムとも言えるでしょう。

④のように8分3連で刻むと丸みを帯びたようなニュアンスのリズムになるかと思います。

実際にメトロームを鳴らして「パルス」を刻みながら、楽器を弾いたり、手拍子をしてみたりして「パルス」による違いを体感してみて下さい。

これまで、「パルス」なんてものを全然気にしていなかった人は、慣れるまでしっかりと意識しながら演奏してもらって構わないのですが、あまりに意識しすぎると、今度はリズムが機械的になりすぎてしまう場合があります。

まずは「パルス」に慣れることが先決ではありますが、完全に「パルス」に支配されてしまっては人間らしい、生き生きとしたリズムからはかけ離れていってしまいます。この加減が非常に難しいところではあるのですが。

また、自分の中で「パルス」を意識しすぎて、他の人の演奏にほとんど注意が向かなくなってしまっては本末転倒になってしまいます。

要は無意識にできるようになるまで練習するしかないということです。「パルス」による正確さがしっかりと体に染み込めば、他の人の演奏を気にする余裕も出てくるでしょう。

まとめ

日本人は西洋の絶対的な時間の概念、「タイム(拍子)」よりも、間合い的な要素の強い「間拍子」でリズムを取ろうとする傾向があります。そのため、リズムに乱れが生じてしまうことが多くなります。

演奏者同士のリズムの間合いも、もちろん重要ではあります。しかし、そればかりを重要視しすぎて土台となる「パルス」がきっちりとしていないと、演奏している本人たちだけが気持ち良くなって、聴いている人たちにとって、ぎこちない演奏にしか感じられない場合も出てくるでしょう。

ただ、「パルス」を習得して正確なリズムを身に付けたとしても、躍動感のあるリズムになるわけではありません。「リズムの正確さ」と「リズム感の良さ」は必ずしもイコールではないことも覚えておいて下さい。

しかし、リズムの正確さに欠ける人がいくら躍動感のあるリズムを狙っても、ただのリズムの乱れにしかなりません。まずはリズムの正確さを身につけることが先決です。

リズムの正確さに自信がないという人は、練習の際にまずはしっかりと「パルス」を意識するところから始めてみて下さい。

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