2017.07.14

リズムについて学んでいくと「アップビート」や「ダウンビート」といった言葉たちが必ず出てきます。少し難しい話にはなりますが、リズム感を良くするためには、これらはやはり避けては通れない項目です。

あまり馴染みのない人もいれば、聞いたことはあるけど素通りしてきた人もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は「アップビート」と「ダウンビート」の基本的なことを中心にお話していきたいと思います。

なんとなくは知っているという人も、この機会にぜひ再確認してみて下さい。




アップビート、ダウンビートとはなにか?

日本語でアップビートは「弱拍」や「上拍」、ダウンビートは「強拍」や「下拍」と訳されます。また、学生時代の音楽の授業で出てきたドイツ語の「アウフタクト」はアップビートを意味する言葉です。

指揮者が指揮をする際の腕の動きから由来しているとのこと。拍の裏で腕を振り上げることから「アップビート」、拍の表で腕を振り下ろすことから「ダウンビート」と呼ばれるようになったとされています。

では、アップビートは拍の裏で、ダウンビートは拍の表ということになるのかと言いますと、もちろんその解釈でも間違いではないのですが、それだけでは不十分です。

拍の裏と表についてご存知ない人のために補足として、4分の4拍子を「1ト、2ト、3ト、4ト(1 and、2 and、3 and、4 and)」とカウントした際の「1、2、3、4」が拍の表で、「ト(and)」にあたるのが拍の裏になります。

また、「強拍」や「弱拍」と訳されますが、決して音の強弱ではなく、「強拍(ダウンビート)」は小節の1拍目のこと、「弱拍(アップビート)」は小節の1拍目以外のことであると、まずは覚えておきましょう。

具体的な例

では、具体的ないくつかの拍子の例を上げながら説明していきたいと思います。

皆さんがおそらく一番馴染みのある4分の4拍子の場合、最初の1拍目がダウンビート(強拍)で、それ以外の2拍目、3拍目、4拍目がアップビート(弱拍)となります。

ただ、ポピュラー音楽においては1拍目以外に3拍目もダウンビート(強拍)と捉えることの方が多いかと思います。しかし、厳密には強拍の要素を持った「中強拍(サブ・ダウンビート)」と捉える方が適切でしょう。

basic-concept-of-upbeat-and-downbeat-1

次にワルツで用いられる4分の3拍子についてです。もちろん1拍目がダウンビートで、2拍目と3拍目がアップビートになります。ただ、3拍目は次の小節の1拍目と密接な関係にあるアップビートであることに対して、2拍目のアップビートは3拍目と似た要素を持ってはいるものの、まったく同じニュアンスではないことから「サブ・アップビート」として捉えられることもあります。

basic-concept-of-upbeat-and-downbeat-2

マーチなどで用いられる2拍子についても触れておきたいと思います。2分の2拍子と4分の2拍子のふたつを譜例を用意しましたが、どちらも1拍目がダウンビートで2拍目がアップビートです。

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4分の4拍子と2分の2拍子の違い

少し話が脱線してしまいますが、4分の4拍子と2分の2拍子の違いをしっかりと理解できていないという人も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。

譜面に表記すると同じなので、拍子記号を見ないと判断できませんが、それぞれの拍の役割が異なっています。

先ほども説明致しましたが、4分の4拍子は4分音符を1拍とした「強、弱、中強、弱」の構成に対して、2分の2拍子は2分音符を1拍とした「強、弱」の構成となっており、拍の捉え方が明らかに違います。

頭ではなんとなく理解できていても、実際どうなのか、なかなかイメージが湧きにくいという人も多いかと思います。4拍子と2拍子の違いを分かりやすく表現して下さっている動画があったので、一度是非ご覧になってその違いを体感してみて下さい。

誤解を招くような直訳

アップビートは「弱拍」、ダウンビートは「強拍」と訳されるのに、実際の音の強弱を意味するものではないと先に述べましたが、文字だけを見て、ただ暗記してしまうと誤った解釈をしてしまう人も出てくるでしょう。

それなのに、なぜそういった言葉が当てはめられるようになったのでしょうか?

民謡などの古くから伝わる音楽は1拍目、もしくは1拍目と3拍目にアクセントをつけるものが多かったことから、「ダウンビート」は強勢(アクセント)をつける拍であるという捉え方をしたことから「ダウンビート=強拍」になったとされています。また、盆踊りなどの日本の伝統音楽においても、1拍目にアクセントをつけるものがほとんどだったため、そういった解釈に至ったとも言われています。

しかし、現在のポピュラー音楽においてはアップビートである2拍目と4拍目にアクセントをつけるものがほとんどとなっています。ロックやポップスではスネア・ドラムがそれを担っている場合が多いです。

このような、アップビートにアクセントをつけたリズムを「アフター・ビート」または「バック・ビート」と呼びます。

おわりに

今回は「アップビート」と「ダウンビート」の基本的なお話だけでしたが、それらを理解しているか、していないかだけでも、拍やリズムに対する認識や捉え方がかなり変わってくるはずです。

少し難しい内容と感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、ベーシストやドラマー以外の人でも、音楽をやっていればいつかは必ず通る道なので、早い段階からしっかりと理解しておくことをおすすめ致します。